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販売員が挑戦!夜景の魅力を引き出すプロの撮影法

2025/08/01
販売員が挑戦!夜景の魅力を引き出すプロの撮影法

ビックカメラの販売員が、プロのカメラマンに弟子入りしてワンランク上の撮影テクニックを学ぶ連載企画。

今回は、ビックカメラ 柏店の家電アドバイザー・藤本健人さんが、東京の浅草や隅田川で夜景撮影にチャレンジ。先生は、世界遺産、世界の街並みやスナップ、世界の文化、民族、風景など多岐にわたる撮影を行っている写真家の藤村大介さんです。じつは、カメラメーカーの販売スタッフとしてビックカメラで接客をしていたこともあるという経歴の持ち主です。

時間帯によってさまざまな表情を見せる夜景を、カメラに収めてみませんか。

目次
    左から藤本健人さん(以下、藤本)、藤村大介先生(以下、藤村)。

    1時間前には集合!夜景撮影はロケハンから始まっている!

    今回やってきたのは東京・浅草のすぐそばを流れる隅田川。浅草駅から降りてすぐのスポットで、東京スカイツリーをはじめ、人気の被写体が数多く点在する、都内でも有数の撮影スポットです。

    これからロケハンを始めていきますが、事前の打ち合わせの時点で先生から印象的なアドバイスがありました。

    藤村 夜景撮影にはあまり天候は関係ないんです。雨に濡れる大変さはありますが、濡れた路面に光が反射してより夜景らしい夜景が撮れるメリットもありますよ。ただし、遠景の場合は雨や雲などでかすむので難しい場合もあります。

    そしてこの日は日没の1時間前に集合。これにも理由があります。

    藤村 夜景撮影の場合、最低でも日の入りの1時間前に現地入りするのが僕の鉄則です。知らない場所なら、それよりも前に入ることもあります。
    藤本 1時間前って、かなり早い気がしますね。
    藤村 その日に撮影する構図や場所を決めておくほか、注意すべきことを見つけるのも重要ですね。夜景撮影でよくある失敗が、写真を後で見返したら手すりなど邪魔なものが見切れているパターンです。明るいうちじゃないと見落としてしまいがちなんですよね。撮影直前に慌てると機材を落としたりセッティングをミスしてしまったりするので、できるだけ事前に準備しておけるように、早めに現場入りしましょう。
    藤本 なるほど。事前に下見していても、時間帯で変わってしまうこともありますか?
    藤村 いい質問ですね。時間帯での変化は夜景撮影の“あるある”です。思ったよりも街灯の光が強すぎたり、なんなら宴会が始まったり、トラックが止まったりすることもあります(笑)。移動させることのできないものがあっても、それをどう活かすかを考えるのも夜景撮影の面白さだったりするんですよね。
    藤本 ほかにロケハンで気をつけることはありますか?
    藤村 夜景は昼には見えないものを撮る撮影でもあるので、そこを意識するといいと思いますよ。
    藤本 見えないもの?
    藤村 街灯など光るものを意識することです。これらはロケハン時点の明るい時間帯では光っていないことが多いですよね。ほかにも今日の場合、隅田川に屋形船が通るとその光が水面に反射しますよね。そういう「光が増幅されるポイント」を見つけておいて、それを想像しながら構図をイメージしておきましょう。
    藤本 暗くなるとどこが光って、どう反射するのかを想像しておくことですね。
    藤村 他にも、「光跡」を想像しておいてください。スローシャッターで撮影することで、光の軌跡が写るのでそれが大きなポイントになります。屋形船の移動や、高架を電車がやってくると、それがきれいな光跡になりますよ。理想的にはそれらがクロスしたら最高ですね。

    三脚はマスト!基本設定から始めよう

    藤村 そろそろいい時間なので、まずは浅草駅から徒歩15分の桜橋からスカイツリーを撮影することにしましょう。 夜景撮影においてはタイミングも重要な要素なんですよ。日没後10~20分くらいで「トワイライト」や「マジックアワー」と呼ばれる、街並みが青くなる時間帯になるので、そこを狙いましょう。僕の経験上、2割くらいの確率でトワイライトにならずただ暗くなることもあるので、運次第ですね。自然の風景撮影の場合、思い通りにうまくいくなんてことはあまりないのですが、夜景は運や季節に左右されにくい撮影だとも言えます。
    生徒の藤本さんが今回使うカメラはソニーのα7C II。 レンズはFE 24-105mm F4 G OSSとFE 35mm F1.8
    藤本 カメラの設定で気をつけることはありますか?
    藤村 前提として、夜景撮影には三脚は必須です。また、カメラの位置に融通が効かないことも多いので、レンズは単焦点レンズよりもズームレンズのほうがオススメです。その上で、次の設定を意識してみてください。
    ・手ぶれ補正はオフ。三脚と手ぶれ補正を組み合わせると、逆に変なブレが出てしまうことも
    ・撮影モードは「マニュアル」か「絞り優先オート」
    ・ISOはなるべく低め、カメラ固有のベース感度の一番下に設定。「ISOオート」のまま夜景撮影してしまうと、感度が上がってノイジーな写真になってしまいがちなので要注意。

    時間との勝負!トワイライトでの夜景撮影にチャレンジ

    藤村先生撮影 Nikon Z8 + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S f/22 ISO64 13s 24mm 0.0EV
    藤本 設定できました!
    藤村 それからホワイトバランスも重要です。トワイライトを青く撮るためには「晴天」モードにしておきましょう。その方が地明かりとかタングステン光が見た目に近い色で撮れますよ。
    藤本 構図で意識するポイントはありますか?
    藤村 写真は平面なので、その中で奥行きを表現できるように、手前、中、そして奥にそれぞれ被写体となるポイントがあると見やすくなりますよ。例えばこの場所だと、手前にある手すりの形もかっこいいし、それを活かしてもいいかもしれないですね。
    藤本さん撮影 Sony α7C II + FE 24-105mm F4 G OSS f/4.5 ISO100 0.8s 86mm 0.0EV
    藤本さん撮影 Sony α7C II + FE 24-105mm F4 G OSS f/8 ISO100 5s 36mm 0.0EV
    藤本 寄りと引きでそれぞれ撮ってみました。
    藤村 特徴的な手すりと橋の形をそれぞれ手前に入れていて、奥行きが出ていていいですね。
    藤村先生撮影 Nikon Z8 + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S f/20 ISO64 25s 24mm 0.0EV
    藤村 この写真は中央から右下に向かって淡い光の線が出ていますよね。これは向こうから自転車が通り過ぎて、そのライトが光跡として写っているんですよ。次のロケーションでは、この光跡を狙ってみてください。

    夜景撮影には2つの段階がある

    藤村 今度はさっきロケハンした電車が通る鉄橋を入れた構図です。すっかり日も落ちて空が真っ暗になったのがわかりますよね。
    藤本 はい。さっきまで青っぽくなっていたのがよくわかりますね。
    藤村 夜景撮影では、日中と比べて空と地上の明るさが逆転します。逆に言えば、空のほうが明るいと夜景にはなりません。空の露出が地上より1段ぐらい暗くなった頃が美しく撮れる目安で、その時点から暗くなるまではたくさん撮り続けましょう。
    藤村先生撮影 Nikon Z8 + NIKKOR Z 24-120mm f/4 S f/18 ISO64 30s 27mm -0.7EV
    藤村 あっ、ちょうど電車と屋形船がクロスしそうです。ここでシャッターを切ってみましょう。
    藤本 ……あっ! すごい! 光跡がきれいに出てますね。
    藤村 雲と水面にも注目してみてください。露光時間が長いので、雲の流れが表現できているほか、水面も幻想的になっていますよね。
    藤本さん撮影 Sony α7C II + FE 24-105mm F4 G OSS f/11 ISO50 25s 52mm 0.0EV
    藤本 僕のは……撮れてました!
    藤村 いいですね。夜景撮影はタイミングを待つのも重要なポイントです。電車と屋形船が一緒に来るタイミングがあってよかったです。

    最後は夜のストリートスナップに挑戦!

    藤村 せっかく浅草に来ているので、夜のスナップにも挑戦してみましょう。夜景といえば遠景写真をイメージしがちですが、近景のスナップも夜景撮影の一種です。
    藤本 はい!
    藤村 モノクロ縛りでやってみましょうか。
    藤村先生撮影 Nikon Z8 + NIKKOR Z 35mm f/1.8 S f/1.8 ISO200 1/8s 35mm 0.0EV
    藤本さん撮影 Sony α7C II + FE 35mm F1.8 f/6.3 ISO400 1/13s 35mm 0.0EV
    藤本 モノクロだと雰囲気が一気に変わりますね。
    藤村 夜の暗さや被写体のフォルムを強調するのに効果的ですよね。
    藤本 僕はこれまで撮影してから、後加工でモノクロにしていたんですけど、撮影するときからモノクロにしたほうがいいですか?
    藤村 撮影時からモノクロ設定にしておくのがオススメです。後からの加工でも仕上がりは変わらないんですけど、撮影する時点でモノクロにしていたほうが写真のイメージを持ちながら撮影できていいですよ。
    藤村 それでは最後に、この人形を撮ってみましょう。僕からはあえてアドバイスしないので、チャレンジしてみてください。
    藤本 えっと、被写体と向き合って……
    藤本さん撮影 Sony α7C II + FE 24-105mm F4 G OSS f/4 ISO1600 1/13s 36mm 0.0EV
    藤本 こんな感じですかね。
    藤村 広角レンズで攻めるなら、もっと思い切り寄ったほうがパースのついた表現ができ、迫力や遠近感が強調できますよ。
    藤本 なるほど……こうですかね。
    藤本さん撮影 Sony α7C II + FE 24-105mm F4 G OSS f/4 ISO1250 1/15s 24mm 0.0EV
    藤村 いいですね!
    藤本 ありがとうございます!

    夜の闇に輝く都市風景から、光の動きを収めた動的な夜景、そして昼間とはまるで違う表情を見せる夜のストリートスナップまで。今回はいろいろな種類の夜景撮影を実践してみました。

    遠景、中景、近景といった距離の取り方や、シチュエーションによる光の捉え方など、夜の撮影ならではの奥深さも感じていただけたのではないでしょうか。

    ぜひ今回の内容を参考に、あなただけの夜景を探しに出かけてみてください!

     

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    Profile
    藤本健人
    カメラコーナー フォトマスター準一級
    藤本健人
    ビックカメラ柏店 カメラコーナー担当。コンクリートや金属など、無機質な被写体をこよなく愛している人。休日はカメラを片手に街中から路地裏まで歩き回りながら撮影を楽しんでいる。
    藤村大介
    写真・講師
    藤村大介
    1970年香川県出身。こんぴらさんの麓で育つ。高校では剣道やバンド活動に励み、日本写真芸術専門学校へ進学。アシスタントを経て独立後、カメラ販売をしながら主に海外で撮影を続けた。世界遺産や街並み、文化や民族など旅の風景を撮影し、取材都市は500を超える。日本初となる海外夜景のみの個展「暮色情景/富士フォトサロン東京」をきっかけに夜景写真家として知られるようになる。30年以上撮影を続けている“世界の夜景シリーズ”は海外でも展示され評価が高い。作品は美術館にも収蔵されている。 公益社団法人 日本写真家協会正会員 ウィステリアフォトクラブ主宰
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    照沼健太
    文・写真
    照沼健太
    大学卒業後、「MTV PAPER」「MTVJAPAN.COM」の編集を担当。その後、株式会社インフォバーンにてWebコンテンツ制作、Webディレクション、SNSプランニング等の経験を積み、独立。「AMP」編集長を経て、音楽・カルチャー・広告等の分野にて編集者・ライター・カメラマンとして活動。2018年、コンテンツ制作を行うため『合同会社ホワイトライト』を設立。
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